2月 4 2010

雪姫第二章七話

第七話
「離して!!!!」
必死に振りほどこうとするが、男の力が強いせいで外れる気配すらない。
これが男女間の力の差と言うものだろう。
もし仮に私がまだ妖怪だったら、この男は一瞬で絶命をしているに違いない。
しかし、それは意味の無いことだ。今の私は人間で、妖怪ではない。
現実世界に『もしも…』なんてことはないのだから。
「オイオイ…さっきまで散々クズとか言っといて良く言うぜ。威勢のいいのは最初だけかい?」
男が口角を持ち上げ、ニヤリと笑う。
薄らと見える黄ばんだ歯を、一本一本へし折ってやりたい衝動に駆られる。
尤も、今の私には攻撃どころか、自分の身を守れるかどうかさえ微妙だった。
攻撃力も防御力もない。今の私は、この男に対して完全に無力だった。
「人を…呼びますよ…?」
脅しではない。本当にやるつもりだ。
「呼べば!?もっとも呼んで誰かが来てくれるとは思わないがな!!!」
威風堂々という言葉がある。その言葉を体現するかのように、男は落ち着き払っていた。
非があるのは完全に向こうなのに、何故こんなにも落ち着き払っていられるのだろうか。
疑問に思うのと同時に私なりの答えも一応出した。
それはきっと『捕食者』だから…。
「誰か!!!!助けて!!!!!!!」
一生懸命、叫んだ。
辺りのコンクリートやアスファルトに私の声が反射する。
小さい身体から、音を伝える振動が走り、空気中を伝って、周りへと響く…はずだった。
否、精確には確かに私の声は空気中へと響き、結果として、周りにも響いた。
しかし、誰も何もしてくれなかった…
そんな最中、偶然スーツ姿の男性と目が合った。
私はその男性に真摯な眼差しで、助けを求めた。
私の眼差しを感じた男性は、冷たく、私から目を背けた。
その行為が示す意味。
それは暗に「オレはお前を助けることは出来ないよ」っと私に告げていた。
「ほら見ろ!!!誰も助けてくれる人なんかいないんだぜ」
しばしの沈黙。
「警察を呼びますよ…。嫌ならこの手を離してください!!」
男は一瞬目を見開き、笑い出す。
「くっくっく…ここまで頭がお花畑な女は初めて見たぞ。
まず第一に、警察を呼ぶって言う奴をタダで返すわけないだろ?。
第二に、被害が起きてから対処しても遅いよな?
ここはドラマの世界じゃないんだぜ。誰も何も助けてくれない」
悔しい程に、この男の発言は、的を得ていた。
完全に、八方塞がりだ。
「どうする?お嬢ちゃん。あと少しだけ待ってやる。
そんで、オレの納得いく答えを導きだしたら逃がしてやるよ。
だが、逆なら…」
男は途中でセリフを止め、ニヤリと笑った。


1月 27 2010

雪姫二章六話

第六話
「今日は何を食べようかぁ~」
「ワンワン!!」
イベリスの散歩中。イベリスに話しかける。
ワン以外に返事はできないかもしれないが、きっと誰もがやるはずだ。
私の食事風景も少しだが、変わった。
食卓の横にはイベリスが常にいる。私とイベリスは寝食を共にしていた。
私が食事をする時に、イベリスも食事を。私が就寝する時、イベリスも布団に入り就寝する。
そんな生活が日課になっていた。
イベリスは犬のくせに、少し贅沢で、寒がりだ。
私と一緒に行動をすると色々と得があることも知っているらしく、
自然とそう言う生活になるらしい。
私が食事をしているときは、私のご飯を。
私が就寝するときは、布団と私の温かさを求めて布団に入り込む。
ただ問題なのは、私としてもそれがすごく嬉しいと思ってしまうことだった。
本来ならばその手の生活は、犬としては相応しくない。
私も、つい、そんなイベリスを甘やかしてしまい、
犬にしてはきっとすごく豪華な生活を送っているに違いない。
「お前さんは犬なんだからもう少し質素に暮らさないといけないんだぞ」
「ワンワン!!」
気前よく返事をするイベリス。
絶対に意味が分かってないだろうっと心の中で突っ込む。
でも、意味なんか分かっていなくても、きっとお互いに心の中で繋がってるはずだ。
「おいお嬢ちゃん。随分と可愛い犬連れてるね~♪オレも一緒に散歩させてよ」
突然男が私に声をかけてくる。
知りもしない人間に声をかけるとは随分と図々しい人種のようだ。
風貌は、金髪。そしてアクセサリーを首や指にじゃらじゃら付けている。
耳には一体何度痛い思いをしただろうか?と、思わず思ってしまう程の、
ピアスが、ぶらぶらと揺れ動いている。
一言で片付けると生理的に受けつけない。
きっと周りもそう思っているに違いない。
この手の人間は、歩くだけで周りを不快にさせる。
人間に上も下もないなんていうが、間違いなく人間としては下に位置している。
「今忙しいの…。後にしてくれる?」
「おいおい…。つれねぇ~な。大体あとっていつだよ」
「さぁ…」
素っ気なく返事をする。
関わり合いたくないのだ。
気持ちと言うものは、そのときの対応に大きく影響する。
このときの私の対応はごく当たり前だろう。
「オレ犬あやすのがうめえんだよ!!ほら貸せよ」
男の汚らしい手がリードに伸びてくる。
「触らないで!!!!!!不快なの!!気持ち悪いの!!!!
どこかへ行って!!!!!!!!」
愛しいイベリスにまで、取り入ろうとするこの男が心底憎たらしく思えた。
「おいおい…そこまでいったんだ…。タダで済むと思うなよ?」
今まで、必死に取り入ろうとしてた男が突如として牙を剥きだしにする。
「そうやって、自分の都合で人がコントロールできなくなった途端に、牙を剥きだしにする。
本当にクズね…。」
「クックック…こんなに活きの良い奴は久しぶりだな…」
喉を鳴らし笑う男。私の腕を握る男の力が、強くなる。
どうやら…ただでは帰してくれないらしい。


1月 15 2010

雪姫第二章五話

第五話
イベリスが我が家に住み着いてから既に一週間が経とうとしていた。
我が家には私の物よりもイベリスの物の方が多くなってしまった。
元々私には物欲と言う物がない。必要最低限の生活さえ送れればいい、と思う節さえあるのだ。
イベリスの物の方が多くなるのは、必然と言ってもよかった。
でも私はそれでいいと思っている。私が物を買っても、どうせ大した喜びも見出せない。
その点イベリスは喜んでくれるのだから。
「雪さん最近何か良い事でもあった?」
「!?え!!?」
突然の問い掛けに驚く。クラスメートで私に話しかけてくる子なんて今までいなかったのに。
「何で?」
「だって…なんか最近刺々しさがなくなったもん」
自分では特に意識したつもりはない。やはり、イベリスの存在が大きいのだろうか?。
安らぎをしった今ではイベリスのいない生活など想像が出来ない。
たった一週間でこれなのだ。
今ではもう家族の一員と言っても過言じゃない。
「そう…あったの…かな…」
そのときの私は、意識をしたつもりはなかったが、自然と口角が上がっていた。
「へぇ〜!!どんな!?どんな!?」
クラスメートが目をキラキラと輝かせて、質問をぶつけてくる。
きっとこれが犬だったら、尻尾を千切れんばかりに振っているのだろう。
彼女の頭に犬耳が生えて、ピクピク動く。そんなシーンを思わず想像してしまう。
「ふっ…」
余りにも違和感のないその想像上の姿に私は思わず笑ってしまった。
「あ!!酷〜い!!私のこと笑うなんて!!」
「ごめん。ごめん。ちょっと…ね」
今まで白かった景色が、ゆっくりと、そして確実に、色鮮やかに染まっていく…。


1月 8 2010

雪姫第二章四話

第四話
「ワンワン」
犬が狭い家を右へ左へと走り回る。
狭いのですぐにぶつかりそうになるが、方向転換を繰り返し、
行ったり来たりを繰り返している。
その走り回る様子に、自ずと笑みが溢れてくる。
自分にもこんな表情が出来たのかと、思わず驚いた。
「きゃ…」
犬が突然、自分の方へと飛びかかってくる。
突然の犬の行動に私は思わず尻餅を付いてしまった。
そんなに面白みもないような部屋だ。犬の関心が自分に向くのは
不思議なことでも何でも無い。当たり前のことだった。
犬がまるで「構って構って!!」と言うかのように、
私の足に飛びかかってくる。
尻尾は喜びを表現しているかのように、振られている。
それだけ尻尾を振っていて疲れないのだろうか?と
ちょっとした疑問さえ沸いてしまう。
「どうしよう…」
このままずっとこの姿勢のままの方が、いいのだろうか?。
犬の動作一つにオロオロしてしまう。
「そうだ!!名前を決めよう!!」
犬はきっとそんなことはどうでもいいのだろう。
恐らく、言葉の意味自体もよく分かっていないに違いない。
私の声を聞き、嬉しそうにワンワン吠えている。
「じゃあ……どうしようか…」
改めて、犬の風貌を確認する。
白い毛につぶらな瞳。愛くるしい尻尾。
どんな名前が良いのだろう?。
色々な名前が頭の中を駆け巡る。
人間になってから、初めて交流を交わした存在だ。
やはり素敵な名前を付けてあげたい。
名は体を表すと言う。
見た目にともなった名前のがいいのだろうか?。
「ん~…よし!!お前の名前は今日からイベリスだ!!」
まるでお菓子を束ねたような容姿。
春に咲く明るいイメージ。
どれをとってもこの子のイメージにぴったりだ。
「今日からよろしくね。イベリス」
私の身体にのしかかるイベリスをぎゅっと抱きしめた。
「さて…明日はどうしようか…」
イベリスのために色々な物を買いにいかないといけない。
イベリスの餌。イベリスのトイレ。イベリスの首輪。
考えればきりがないような気がした。
「ん〜…少し眠いかな…イベリス寝ようか」
鼻先をイベリスと合わせ、見つめ合う。
たった一つの存在で、今と言う時がこんなに色鮮やかになる。
イベリスの体温を腕に感じながら、私はその場に横たわった。


1月 6 2010

ごめんなさ〜い!!(汗。

雪姫停滞中でごめんなさい…(汗。

一応ちょこちょこ書いてます。

こんな感じにしよう!!という大まかな構想も出来てますので、

見捨てないでください!!(涙目。

やっぱりこういう創作系の活動は、気が向くかどうかっていうのは

すごく大きな問題だと思います。

更新しなくてもアクセス数伸びてるじゃんとかちょっと考えたり(爆死。

一応、完結させるつもりはありますので^^

実は次に載せようと考える作品もありますが(爆)、

それをやると今の作品が確実に終わらないのでやりません!!

みんなエロだけじゃなく、雪姫楽しみにしてるよね?と

ちょっとドキドキしてる今日この頃です。

私頑張るからねぇ!!

ノシ〜!!


12月 30 2009

雪姫第二章3話

第三話
「家…か…」
アスファルトで舗装された道路の上で、一人呟く。
日が落ちかけているこの時分、人はめっきりと少なくなる。
辺りを見回しても、ポツリポツリとしか人を見ることが出来なくなった。
人間になどなる意味があったのだろうか?。
私が生を終えると同時に、私の魂はあの男の元へと行き、
恐らくは酷い苦痛を味わうことになるだろう。
前と今、ただ人間が側にいるかどうかで、余り変わっていないような気がする。
悲鳴を挙げていた少女…。
あの少女は私の未来であり、将来だ。
彼女は一体どんな願い事を託し、どんな結末を迎えたのだろうか?。
物事は全てが全てハッピーエンドを迎えるとは限らない。
例え、犠牲を払ったとしても、バッドエンドを迎える結末もある。
彼女の苦悶に喘ぐ表情が頭から離れない。
ふとした隙に、私の頭の底から這い上がってくる。
そのことを考えると…凄く…恐い。
しかし、恐怖におののく…なんてことはしたくない。
無様だし、無意味な行為だから。
ちょっとした時間があるとすぐに嗜好が暗い方へ、暗い方へと向かってしまう。
悪い癖だ。
「キャン!!キャン!!」
人間では発生できないような声が聞こえる。
声のした方を見てみると、段ボール箱に犬が入っていた。
段ボール箱には、「拾ってください」と書いてある。
人間は、時にこういう残酷さを併せ持つ。
「お前も…一人?」
前屈みになり、犬と視線を合わせる。
犬は犬だ。返事に答えたりはしない。
しかし、その代わりに、つぶらな瞳で、一生懸命私を見つめてくる。
「私も…一人なんだ…来る?」
手を差し出す。
私が私であることの証明。
犬はその手の匂いを入念に嗅ぐと、ペロペロと私の手を舐め返してくれた。
涙が出そうになった。
私は、小さい命かもしれないが、やっと誰かに認めてもらえた気がした。
それがすごく、嬉しかった。
その小さい命を私はこの手で持ち上げる。
「さぁ帰ろうか…。私たちの家へ…」
犬と言う荷物を拾った分、私への負担は大きくなるに違いない。
現に今だって、重さという負担になっているのだから。
しかし、その小さな命は、すごく、すごく、温かかった。
「温かい…」
私は、しっかりとこの子のことを、腕の中で抱きしめた。
頬に、水が伝った気がする。そして、その水は小さな命が拭い取ってくれた。


12月 29 2009

雪姫第二章二話

近いような、遠いような、そんな記憶だ。
もっとも、記憶なんて物はどれもそんなものかもしれない。
凄く昔のことがつい最近に感じたり、
最近のことが昔のことのように思えたり。
時間と言う物は絶対ではないのだから…。
少し考え事をしているうちに、辺りは暗い時間と明るい時間の境目になっていた。
外を見れば、白に近かった太陽が、赤に等しいような色に変わっている。
それに伴い、辺りの世界も赤みがかっている。
私の周りには、誰もいない。
「フ〜」
本当に静かだった。
時折聞こえてくるのは、部活動などで残った生徒達の声や外で遊ぶ子供達の声ぐらいだった。
耳をすませば聞こえてくる。そのぐらいの物だ。
私は…幸せなのだろうか?。
幸せ?。
幸せ…だと思う。
幸せ?。
幸せと…と思わなくちゃ行けない。
幸せ?。
分からない。
勉強を苦痛に感じたことは無い。問題を解くのは楽しいし、本を読むと目の前にありありと
浮かぶ風景があるのだから。
手に力を入れる。すると、指は思った通りに曲がる。
それは自分がここにいるということの証明。
しかし、世界は私のことを見ているのだろうか?。
きっと、私が居なくなっても、誰も何も困らない。
だって…、元から私はこの世界に居なかったのだから。
だから、だれも困らない。悲しまない。喜ばない。
愛情の反対は、憎悪などではない。無関心なのだ。
きっと、クラスメートの大半が私のことなど気にはしていない。
何故、憧れの人間になれたのに、私は幸せと言い切ることが出来ないのだろう。
分からない…。分からない…。分からない…。
まとまらない思考。しかし、いつまでも考えているわけにはいかない。
私は自分の家に帰るために、ゆっくりと席を立ち上がった。
家に帰ろう…。誰も待っていない家に…。


12月 29 2009

大事な大事な重要事項!!

うちのサイトはエロオンリーじゃないんだよ!!!

一応の確認ね(汗。ハ!?って言われるかもしれないけど、

本当なんだよ!!(汗。

……ショボ〜ン。

一般もお願いします…しくしく……


12月 28 2009

とにかくすっごい愛の鉄拳パ〜ンチ!!!

アルカナですよ皆さん!!!!アルカナ3が出たんです!!

いやぁミルドレッドの姉、アンジェリアを出して終わりだと

思ったんですがね^^嬉しい誤算です。まさか別の組織が

出てくるなんてwwww

しかし!!ここで問題が一つ発生しました。

私の近所のゲーセンには入らないかもしれないのです!!

とりあえず、アンケートに導入してほしいって描いてきましたが…。

遠くまで行かないと無いのかなぁ〜…orz


12月 24 2009

雪姫第二章1話

キーン…コン…カーン…コーン…
終業の合図が学校の中を駆け巡る。その音を聞いた生徒達は、ガヤガヤと喧噪を立て、
自分の席を後にする。
空を見れば、青々とした、綺麗な景色が広がっている。
昔いた冬山の夜景の方が、もっと綺麗だったが、心理的には今のこの空の方が酷く美しく感じられた。
「フー…」
自分の手を見つめ、おもむろに力を入れてみる。
すると指は、自分の入れた力の通りに曲がる。
当たり前のことだった…。
あの事件から早一ヶ月が経とうとしている。
今でも夏の日差しは嫌いだが、それでも、夏の日差しが生命に危害を加えるということはなくなった。
『終わった…のだ』
セミの鳴き声が、私の耳の中で木霊する。

酷く身体が頼りない。
私の身体と言うのはこんなにも脆弱な物だったのだろうか?。
「あが…」
口からは、意味をなす言葉が出て来ない。
出るのは、後にも先にも嗚咽と奇声だけだ。
立てる気がしない。
やる気がないとか、気力がないとか、そんな他愛のない話ではなかった。
純粋に立つ力がないのだ。
「どうです?生まれ変わった気分は?」
荒い息しか出て来ない。
男のセリフに返事をしたくても、返事をするだけの力がない。
「フフ…話す力さえないんですね。まぁ分かってはいましたが」
この男の言動は、本当に癪に触る。
身体の力を振り絞り、私は男を睨みつけた。
とは言っても、こんな瀕死の状態の私が睨んでもさした恐怖を与えないだろう。
「今のあなたを見てると…すごく…興奮しますよ…。今すぐ、閉じ込めたい衝動に駆られますが、
それは契約違反ですから辞めておきます…。あくまで紳士ですから」
男は本当に残念そうに溜め息を吐く。
この男はムカつくが、それでも契約を破棄するような荒くれ者ではないのだ。
その点だけは感謝した。
「今のあなたの状態は完全に人間と同じです。今までは妖力が行動の大半を支えていましたが、
これからは注意してください」
男が注意点を語る。
「あと、あなたの死で私との契約が履行することも忘れないでください。なお、私は
あなたを殺そうとしたり、助けようとしたり、なんてことはしないので安心して下さい」
私は話したくても話せないような状態だ。
自分の疑問点について質問するようなことさえ叶わない。
「あ?ちなみにその身体の状態は1日も経てば、治りますので安心してください」
安心した…。
この状態がもし仮にずっと続くなら、私が人間になった意味は、さしてないのだから。
「あと…これはちょっとした差し入れです」
男が私の前に何枚かの紙を投げつける。
「あなたのこの世界における身分証明書とあなたがこれから通うことになる学校への書類です…
最近はやれ書類だの身分証明だの物騒な世界になりましたから」
やれやれといった口調で男が語る。ジェスチャーまで加え、本当に困ったような感じだ。
「…何で……私にそこまで?」
ようやく呂律が回るようになった。
私の喉はとぎれとぎれかもしれないが、声を発することに成功した。
「ちょっとしたアフターサービスですよ。あなたが本当に満足した上でないと、
紳士とは言えませんから」
陽気に男が笑った。
「私が…契約するかどうかも分かってなかったのに?」
この質問を聞くと、男はニヤリと笑う。
「分かっていましたよ。始めから…。では…」
そして私が目を伏せて起こすまでの間に男の姿は消えて無くなっていた…。